南房総ゼミ(MBゼミ)は、明治大学情報コミュニケーション学部2年次問題発見ゼミナール「「シェア」で読み解く個人と社会−分有・共有のナラトロジー物語学」として2016月4月に開講され、2018年度からは1年次基礎ゼミナール「土地の記憶を読む:表象分析入門」・2年次問題発見ゼミナール「土地と記憶の物語学」として開講されています。
2018年度1年次基礎ゼミナール・2年次問題発見ゼミナール
1年次基礎ゼミナール「土地の記憶を読む:表象分析入門」
【授業の背景と問題設定】
小説や映画,演劇,漫画やアニメ,絵画等,私達の周囲にはさまざまな表象作品が生み出され,流通しています。そうした作品に描かれる物語世界は「虚構」と称され,実在する現実世界とは異なると理解されるのが一般的です。ところが,表象作品には,実在する土地を物語の舞台として描くものがあり,そうした作品を享受した人々がその土地を訪問する「聖地巡礼」と呼ばれる現象も起きています。
では,実在する土地を舞台とする物語において,その土地はどのように描かれているのでしょうか。また,実在する土地を描く物語と,架空の土地を描く物語とでは,物語のどのような点に違いが生じるのでしょうか。さらには,実在の土地を描く物語を享受する体験を通じて,私達はどのようにその土地を理解することになるのでしょうか。
【授業の目的と方法】
本ゼミでは,表象作品における物語と土地の記憶との関わりに焦点を絞り,受講生が実在の土地を描いた表象作品を分析するだけではなく,物語の舞台となった土地を実際に訪れて,その土地がどのようにして物語の舞台となったのかを考察することで,上記の問いに答えることを試みます。
【到達目標】
土地と人間との関わり方にはさまざまな形がありますが,本ゼミでは,とりわけ土地と人間とを結びつける〈物語〉の役割を理解できるようになることをめざします。
2年次問題発見ゼミナール「土地と記憶の物語学」
【概要】
住む場所や働く場所のような日常の生活を営んでいる土地や旅行で訪れる土地等,私達は人生を通じて多くの土地との関わりを持つことになります。では,それらの土地は私達の人生にどのような影響を与えるのでしょうか。
これまでさまざまな研究分野が土地と個人や社会との関わりを調査し,その複雑な結びつきを解き明かしてきました。そこで,本ゼミでは,そうした先行研究の蓄積を踏まえつつ,土地に刻まれた過去の記憶に着眼し,個人が土地の記憶をどのように受け止め,自らの人生に取り込んできたのかを考察します。
具体的な研究方法としては,千葉県の南部に位置する南房総市に赴き、そこで活動している人々にインタビューを行い,その人々の人生の物語を創作します。物語の執筆を通じて,南房総という土地とその人々の人生とがどのように結びついているのかを考察します。
ゼミ生は,物語の執筆によって,南房総に関わる人々の人生を追体験するだけではなく,インタビュー対象者自身も自覚していないその人物と土地との関わりを掘り起こすことになります。こうした本ゼミでの活動を通じて,私達の生の営みに可視・不可視の形で影響を与える土地の記憶について理解を深めることができるでしょう。
2016年度・2017年度2年次問題発見ゼミナール「「シェア」で読み解く個人と社会−分有・共有のナラトロジー物語学」
ゼミの目的:
「シェア・ハウス」,「ワーク・シェアリング」,「シェアリング・エコノミー」等,近年,さまざまな場面において「シェア (share)」という言葉を耳にする機会が増えています。興味深いことに,「シェア」は,物事を複数の人間が共有することを意味する言葉としてだけではなく,個人や集団の行動原理や思想として,社会に浸透しつつあるようです。
そもそも,人間は,「シェア」という言葉が使われるようになるずっと前から,様々なモノやコトを共有する営みを続けてきました。では,人々は何を,何の為に,どのような形で「共有」してきたのでしょうか。また,こうした古来の「共有」の営みは,現代の「シェア」の思想とはどのように異なり,また,どこで繋がっているのでしょう。そして,現代においても私達は様々なモノやコトを共有して生きています。そうした「共有」の営為の一つ一つは,わざわざ「シェア」の思想として言挙げされることのないような,ありふれた些細な出来事かもしれません。では,私達は日常生活の中で,時に意識せず,何をどのように「共有」しているのでしょうか。
そこで,本ゼミでは,「シェア」を実践している個人へのインタビューを通じ,「シェア」という営為が私たちの生に与える意味や,「シェア」を介する自己と社会との関わり方を考察します。具体的には,毎学期ごとに千葉県の南部に位置する「南房総市」に関わりのある10名の方にインタビューを行い,さまざまな形で南房総という場を他者と「シェア」している彼らの話を聞き取ります。そして,彼らの人生と南房総との関わりを検討した上で,南房総を舞台として活動する人々の物語を執筆します。
2016年度の活動内容:
第1期「シェアと自分」:自分達の身の回りで行われている「シェア」の実態を調査する
日程 | 内容 | 実施場所 | |
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第1回 | 4月14日 | オリエンテーション | 和泉 |
第2回 | 4月21日 | 自分の周りの「シェア」を調査する | 和泉 |
第3回 | 4月28日 | 時間軸を遡り、前近代社会での「シェア」を見つける | 和泉 |
第4回 | 5月12日 | 空間軸を広げ、都市・地方の「シェア」を考える | 和泉 |
第2期「シェアと現代社会」:「シェア」を実践している社会人にインタビューを行う
第5回 | 5月19日 | インタビューの方法を学ぶ | 和泉 |
第6回 | 5月26日 | 南房総について調べる ゲスト:永森昌志さん | 和泉 |
第7回 | 6月2日 | インタビューの準備をする | 和泉 |
合宿 | 6月4・5日 | インタビュー調査を行う | 南房総 |
第8回 | 6月9日 | インタビュー調査の準備をする | 和泉 |
第9回 | 6月16日 | インタビュー調査を行う | 和泉 |
第3期「シェアと物語」:インタビュー内容を基に,「シェア」をする人々の物語を執筆する
第10回 | 6月23日 | 物語の構造を学ぶ | 和泉 |
第11回 | 6月30日 | 物語を構想する | 和泉 |
第12回 | 7月7日 | 物語を執筆する | 和泉 |
第13回 | 7月14日 | 物語を完成させる | 和泉 |
第14回 | 8月初旬 | 研究成果発表会 | 「HAPON」新宿 |
ゼミの運営:
本ゼミは,2016年5月に明治大学情報コミュニケーション学部と千葉県南房総市との間で結ばれた「教育事業に係わる協定」に基づいて運営されています。